経理って本当に自閉症(ASD)に向いている仕事なの?
今の仕事が自分に向いていると思っている方はどれぐらいいるのだろう?
両手を挙げて、答えられる人ってなかなかいないかもしれませんね。
特に自閉症だと、営業が合わなかったり、企画関連の仕事の調整で躓いたりする方が多いと思われます。
今日は自閉症(ASD)の方にとって、経理は本当に向いているのかを考察してみました!
実際、一般職の経理で働いた経験も踏まえて、私の意見を述べます。
章立て
1.なぜ自閉症が経理に向いているという声と向いていない声があるのか
2.経理の一般雇用と障害者雇用の比較
3.経理のAI代替問題
4.簿記の勉強は無駄にならない!
5.まとめ
1.なぜ自閉症が経理に向いているという声と向いていない声があるのか
自閉症の方が向いている仕事の一つとして、経理を挙げられる就労移行支援所もあります。
一方、経理は不向きとする声もあります。
自閉症(ASD)の向いている仕事の一覧で、なぜそこまで違いが出るのか。
それは経理の仕事において、自閉症(ASD)の特性でメリット・デメリットの両方があるからとの考えを導き出しました。
経理事務員までは発達障害のメリットを活かす事ができても、管理職となってからは間違いなく、苦手な特性が表に出るのです。
発達障害の方が経理を行う上でのメリット・デメリットに分けて考えてみます。
メリット
- ルールを守る事ができ、不正は絶対に許さないぞ!という正義感が非常に強い
- ルールさえ決められていれば、その通りの仕事(定型業務)はテキパキこなすことが可能
- 集中力が高い傾向にある人が多い
正義感の強さは経理をやる上で、一番重要です。また、社会人の必要な力の一つですね。経理は最も不正(粉飾決算・横領)の被害が甚大となる職種の一つであります。
また、経理の職種そのものがマニュアル化されている部分も多く、ルールをしっかり頭に叩き込めば、健常者並みかそれ以上の活躍が見込まれます。規則に縛られることに抵抗がない方であれば、問題ありません。
集中力も高い方が多いので、仕事に慣れる事ができれば、ミスは減らすことができる 傾向にあります。
ですが、経理事務員まではメリットがありますが、管理職以降は・・・
デメリット
- マルチタスク(同時並行作業が苦手)
- 人間同士での調整業務が苦手な傾向にある(コミュニケーション能力の問題)
ここからは主に管理職になるにつれて、発生する問題です。企業によっては平社員でも発生することがあります。管理職はどの職種においても、マルチタスクになる傾向がありますが、経理も例外ではありません。
中小企業だと、より多くの業務を任される傾向にあり、平社員でもマルチタスクの問題が発生しやすくなります。中には、総務の仕事まで兼任する事例も・・・
調整業務ですが、これは上の役職になるほど発生しやすくなります。しかし、私のように平社員でも任されることがあります。調整業務はマニュアルに囚われない臨機応変な対応力が必要となります。よって、臨機応変な対応力の弱いASDの方には苦手な業務となります。
2.経理の一般雇用と障害者雇用の比較
一般雇用
メリット
- 平社員まではマルチタスク・調整業務がない限り、あまり問題は発生しない。
- ある程度専門性もあるため、給料も高い。資格手当が出ることも。
デメリット
メリット
- 調整業務やマルチタスクは配慮して、割り当てない可能性があるため、働きやすい環境にある。
- 電話対応も職場によっては、やらなくてすむ。
デメリット
- 経理事務員より上のキャリアに上がるのが難しい。(経営方針の話し合いの参加等の上級の職務に参加できない。
- 給料は安い。昇給もあまりしない。最悪、ボーナスや退職金がなくなる。
さらに、経理事務員のAI代替問題も・・・
3.経理のAI代替問題
経理職は将来、AI(人工知能)による代替が行われるのではないかとされている職種の一つです。これは、税理士・公認会計士にも言える問題です。
実際にAIの職業代替問題を取り上げた記事がありましたので、10年後AIに取られる仕事ランキングの記事とAI代替の可能性のある仕事を取り上げたサイトをご参考に、経理のAI代替問題について取り上げます。
これらの記事で書かれていることは
- 経理事務員は10年後消える可能性が99%以上である。
- 会計系の職種はAIに代替される確率が全職種で最も高い
また、経理の上級職の士業である税理士・公認会計士も8割以上の確率で消滅するとの事です。受かるのが難しい上に、消える可能性が高いです。
しかし、自閉症の方は興味を持った分野はとことんやり遂げるという特性もあります。そのため、人生をかけるほどの興味があるならば、知識面で誰よりも上を目指すという志でやり遂げるのもいいかもしれません。
他にも現役の経理の方のブログで、AIの代替において、経理職はどう立ち回るべきかといったものもあります。
このブログの記事では、マネジメント・経営への提言・ガバナンスの強化が今後、経理の世界で生き残るのに必要な力だとありますね。
自閉症の方はこれら全てで問題が発生する可能性が高いです。
いずれの業務もマルチタスク・コミュニケーション能力の問題が発生する可能性が高いです。さらに、経営への提言はこだわりが強く、対人関係で衝突しやすいという特性があった場合はより厄介なことになります。
ここからは私の実際の体験談
とある中小企業(前職)の経理職にて
入社1か月ほどして、上司に「お前でなくとも、伝票のデータ入力はできる」と言われました。伝票の書き方は分かっていても、データ入力に些細なルールがあり、それを覚えるのに苦戦していました。
数か月後、データ入力が少しできるようになり、ルールをまとめ上げたマニュアルを作成後、即座に会社をクビになりました。
非定型業務(部署間調整)が上手くできなかったこと・僕のしゃべり方の癖などにより、発達障害がバレたことだと思われます。
この会社にはもうどうしようもないくらい文句を言いたことがありますが・・・
一つ分かったのは『データ入力だけなら、パートやアルバイトでも慣れればできる。非定型業務(調整・提言等)ができなさそうなら、そいつはいらない』ということです。
全ての会社がそうではありませんが、そのような会社も一部あります。
4.簿記の勉強は無駄にならない!
この記事をご覧になっている方の中には、簿記の勉強をしてこられた方や簿記の資格をとっておられる方もいらっしゃるかもしれません。
ここまで、発達障害の方は経理事務員までしか上手くいかない、経理事務員自体がAIに代替される仕事だと主張しています。
しかし、私は「簿記の勉強は絶対に無駄にならない」と主張します。
なぜなら、簿記は会社の財政状態の成り立ちの基礎を理解する上での助けになるからです。私たちが給与をもらって働く裏でどのようなお金が動いているのかが少しわかるようになります。
また、株の投資を将来やることになった場合、役に立つ可能性が高いです。財務諸表分析を行う機会があるので。
少なくとも、私は簿記2級までは取っておくことを推奨しています。簿記2級の取り方については後日、記事を作成する予定です。
5.まとめ
ここまで「自閉症(ASD)の方は経理に向いているか」をまとめてきました。
以下、おさらいです。
自閉症の方の経理職は一般雇用の場合は向いていません。他部署との調整業務があるので、そこで問題が発生する可能性があります。また、マルチタスクの問題が管理職になると、強く表れます。
一方、障害者雇用で、経理事務員でキャリアを終えるなら、問題ありません。しかし、将来的にAIが代替するリスクが大きいので、オススメはできません。
しかし、簿記の勉強は会社の財務状態が成り立つ基礎を知る上で重要だから、やっとくといいことずくめです。
今回の記事のおさらいは以上です。
最後に付け加えますと、ADHDは経理事務員も厳しいです。不注意の傾向がありますので、経理事務員の段階でもミスを連発します。すぐに使えないやつとほかされるので、ADHDの方は経理への就職はやめといた方が良いパターンが多いです。
次回の『発達障害に向いている仕事議論シリーズ』は一般事務について、取り上げる予定です。今回の内容とリンクしていますが、改めて整理していきます。
では、今日はさようなら。